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過払い金返還請求ができるかどうかは金融機関によって異なる!
消費者金融や信販会社といった金融機関でキャッシング等の借金をした場合、利息制限法以上の利率によって「過払い金」が発生していることがあります。借金を返済していく上で、債務整理の一環として、過払い金の返還を請求すること(いわゆる過払い金返還請求)を通して、借金額の減額、あるいは完済をすることが出来るケースがあります。
過払い金が発生するメカニズムについては先日ご紹介しましたが(参考記事:『グレーゾーン金利』を分かりやすくいうと?過払い金の仕組み)、返還される可能性は金融機関によって異なります。具体的にどの金融機関でどのような対応がなされているのかについて、過払い金返還時期についてなど、ポイントをまとめてみたいと思います。
(※実際に過払い金が返還されるかどうかについては、ケースによりますので、最新情報はあくまで弁護士を通してご確認されることをお勧めいたします。)
武富士(更生会社TFK株式会社)
武富士の過払い金の弁済2回目はいつ?返還時期は?
厳しいノルマ、社長の息子による恫喝、ブラックな取り立てで話題になった消費者金融大手の武富士が倒産し、会社更生による再生の道を選択したのは、2010年9月の事でした。
大量の過払い金を抱えていた武富士は、過払い金返還請求者に対して行なった配当は、実に3.3%というわずかなものでした。(参考:倒産した武富士とクラヴィスの過払いどうなるの!?)
現在、株式会社武富士は2012年3月1日に更生会社TFK株式会社に社名変更しています。(以下は、わかりやすいよう武富士と呼称します)
そんな中、武富士は更生計画において第2回弁済を行なうと発表しました。返還時期は”いつ”なのでしょうか?
なぜ過払い第2回の弁済が可能なのか?
2012年6月22日のプレスリリースによると、武富士が保有する全資産の換価(つまり資産を売って現金に換える)や回収(有していた債権の回収)がすべて終了した段階で第二回目弁済を行なうとしていました。
ここで疑問に思うのが、果たしてそんなに多くの財源がそこに眠っているのだろうか、という事です。
実は、その財源のほとんどは、現在も「訴訟」によって争われている債権がほとんどなのです。その中で最も大きな債権だったのが、「国に対する債権」だったのです。
武富士が国に対して請求したものとは。
武富士は、国に対して実に2374億6400万円もの請求をする裁判を起こしていました。
これ、一体何のお金だと思いますか?
これは、武富士が過去に利息制限法所定の利息を超える利息を消費者からとっていて、それが無効であるという事が法的に確定した事を受けて(いわゆる過払い金のこと)、という事は、過去に納税した法人税は、利息制限法よりも多く貰っていた分も申告しているわけだから、その分を差し引いて計算し直して還付すべき、と主張したのです。
そしてその還付すべき金額が、計算上2374億6400万円だったのです。なんともすごい金額です。
しかし、残念なことに2015年4月14日付けでこの請求は棄却されてしまいました。よって、2374億6400万円が過払い金の配当に充てられることは叶いませんでした。
その他にも数億円〜数百億円単位の複数の訴訟を提起していましたが、大きな成果は見られず、現在は、残り一つの訴訟が継続中です。二回目の返還時期が来るのはまだまだ先なようです。
第2回目の弁済はいつ?戻る?返還される?
弁済は”いつ”なのでしょう?
プレスリリースを見る限り、第2回目の配当は現在継続中の訴訟の決着がつき次第、何らかの形で行なわれると思われます。
但し、当初あてにしていたと思われる訴訟によって得られるはずの金額のほとんどが裁判所に認められなかったため、配当が行なわれたとしてもかなりの少額であると予想されます。
数年間も待たされたあげく、とても辛いところではありますが、あまり過度な期待はされない方がよいでしょう。
最新情報が出ましたらその後、また記事を更新しますのでお待ちください。
【追記:最新情報】(2016.8.9)
武富士(更生会社TFK株式会社)は6月20日に、管財人を通して、第二回弁済の最終的な告知を行いました。
更生債権の総額は約1兆4796億円ですが、最終弁済金額は約138.6億円で、弁済率は約0.9368%となっています。
弁済率が1%に満たないですので、これは例えば過払い金が100万円あったとしても、1万円の返還も無いという計算になります。
既に過払い金返還請求をしていた方で、弁済対象者となっている方には、すでにお知らせの通知が届いているはずです。平成28年(2016年)9月より、登録口座に振り込みがあるようです。そして、これが「最終」の弁済とのことですので、これ以上の過払い金は返って来ないということになります。
(参照元)更生会社TFK株式会社(http://www.tfk-corp.jp/)
アコム
【特徴】
アコムの場合は、銀行(三菱UFJフィナンシャルグループ)傘下のため、経営が比較的安定している点が特徴です。経営が安定しているということは、過払い金の返還に応じるだけの引当金を用意しやすいため、きちんとした段取りで過払い金返還請求を行なえば、過払い金の返還を受ける事は、そこまで難しくはありません。
【ポイント】
アコムのポイントは、「取引の中断」です。これは過払い金返還請求をする際の一つのテーマでもありますが、どこまでが1つの取引として見るのかによって過払い金の金額は変わってきます。消費者金融側は、過払い金を引き下げるためにやたら取引を分けたがる傾向にあります。
アコムの場合は、取引履歴を開示すると取引の終了時に「解約」との文言がはっきりと記載されているケースがあるため、これによって、以降取引があったとしても一連性が認められなくなり過払い金の金額が予想よりも減る場合があります。これは絶対ではありませんが、予め取引履歴を開示してもらったら確認しておくべきでしょう。
アコムの過払い金については、こちらで更に解説しています。
アイフル
【特徴】
アイフルの場合は、事案にもよりますが任意交渉によって過払い金が全額返還されるケースは非常に稀です。多くの場合、弁護士を通じて交渉をしても正規の過払い金の金額よりも減額した金額を提示してきます。
これに応じて早めに解決することも一つの選択肢ですが、納得できない場合は裁判を起こすしかない場合もあります。
【ポイント】
アイフルのポイントは、裁判を起こすかどうかの見極めでしょう。アイフルの場合、任意交渉によって提示してくる過払い金返還金額は少額である場合も多く、納得できず裁判を起こす場合も少なくありません。アイフルは、裁判によって認められた金額については比較的すんなりと支払いに応じているようですので、覚悟を持って訴えるのも一つの手でしょう。ただし、内容によっては控訴してくることもあるようです。
プロミス
【特徴】
プロミスもアコムと同じく大手であるSMBCコンシューマーファイナンスの傘下ですので、経営状態は安定しています。他の消費者金融に比べ、任意交渉による過払い金返還率も悪くないようです。場合によっては過払い金の満額の返還に応じる場合もあるようです。
【ポイント】
プロミスの場合は、弁護士に依頼してきちんと引き直し計算をして過払い金返還請求をすれば、裁判を起こさなくても返還される可能性が高いため、諦めずにまずは弁護士に相談しましょう。
プロミスの過払い金については、こちらで更に解説しています。
レイク
【特徴】
レイクは、新生銀行グループ傘下のため、単独の消費者金融に比べると比較的過払い金返還請求に応じやすい傾向にあります。
【ポイント】
プロミスと同様に、裁判外である程度の金額で妥協するか、満額勝ち取るために裁判を起こすかが一つのポイントとなります。裁判外であれば早ければ4ヶ月程度で決着がつくでしょう。
CFJ(ディック・アイク・ユニマット)
【特徴】
上記の大手消費者金融と同様に、こちらも出資元がシティバンクという大手消費者金融ですが、現在新規の貸付は停止しているようです。
【ポイント】
CFJの過払い金返還のポイントは、その他の大手消費者金融に比べると手続きが若干一方的であることです。場合によっては一方的に自社の主張する返還金を振り込んでくる場合もあるようです。比較的他の大手消費者金融に比べると「しぶとい」というイメージです。
シンキ(ノーローン)
【特徴】
シンキも新生銀行グループで、経営自体は比較的安定していますので、経営破綻をちらつかせて返還を拒む事は少ないでしょう。
任意交渉の場合はほぼ間違いなく過払い金の減額を要求してくるため、全額回収するためにはすぐに訴訟に切り替える事になります。
【ポイント】
シンキのポイントは、過払い金の満額回収を目指すか、それとも早期解決のために妥協して和解に応じるかの選択です。これについては、依頼人の希望を考慮し判断するしかないでしょう。
オリコ
【特徴】
オリコは正式名「オリエントコーポレーション」で信販会社の中でもかなりの大手に入ります。なお、オリコの株式の約48%はみずほ銀行が、16%を伊藤忠商事が保有しています。このような大手の信販会社には過払い金なんてないだろうとお考えの方もおられるようですが、オリコもまた利息制限法を超える貸付を行なっていた時代があるため、過払い金が発生している可能性があります。
【ポイント】
オリコは平成19年の段階で利息を18%以下に引き下げたため、過払い金が発生しているケースはこれよりも前の貸付に限られます。上記の通り、オリコは大手がバックについているため過払い金を返還するだけの資力もありますし、対外的にあまり荒っぽい事はしないため訴訟ではなく和解によって決着がつく場合が多く、過払い金返還請求の難易度としては低い方です。
ただし、過払い金返還によって借金が完済しない場合は事故情報として個人信用情報機関に登録されてしまうため、以降の借入が難しくなったり、関連するみずほ銀行のカードローンなどにも影響がでたりする可能性があります。
クレディセゾン
【特徴】
こちらも大手カード会社です。永久不滅ポイントなどを売りにしていますが、クレディセゾンで過払い金返還請求の対象となるカードは、セゾンカードとUCカードがあります。セゾンカードはキャッシングで24%〜25%、UCカードで27.8%の高金利で貸付を行なっていた経緯があり、該当する期間に借入がある場合は過払い金の可能性があります。
【ポイント】
クレディセゾンも、先ほどのオリコと同じように次の期日で金利を18%に引き下げています。
セゾンカード:2007年7月14日
UCカード:2007年6月11日
そのためこれ以降の貸付については、過払い金は発生しません。それ以前の貸付についてであれば、オリコと同様しっかりした大企業なので、過払い金返還請求でごねて裁判にまで発展するケースは少なく、概ね任意交渉で満額の返還が行なわれているようです。
クレディセゾンの過払い金については、こちらで更に解説しています。
→【クレディセゾン】過払い金返還請求と手続き・取引期間の分断とは?
セディナ
【特徴】
セディナは複数の会社が合併して発足しているため、合併前の会社から借入をしていた場合はセディナから借入をしていなくても過払い金の可能性があります。
【セディナのもととなった会社】
クオークOMCカードセントラルファイナンス
【ポイント】
セディナの合併もとであるOMCカードは他の消費者金融に比べ利息の引き下げ措置が遅かったため、過払い金が多く発生している場合もあります。(2007年9月2日に改定)
なお、セディナの過払い金返還請求の特徴としては、途中で合併したせいか、取引履歴の開示に時間がかかるケースがあり、およそ4ヶ月程度かかる場合もあります。ただ、返還請求自体には比較的応じやすいため、裁判まで起こさなくとも満額に近い形での和解が可能なようです。
アプラス
【特徴】
新生銀行グループの信販会社です。有名なところで言うと、新生カードのプロパーカードやTSUTAYAのWカードなどの利用履歴がある場合は、アプラスに過払い金返還請求をする事になります。
また、アプラスはショッピングなどで利用していた人もいますが、ショッピングリボについては、過払い金は発生しません。
【ポイント】
実際の事例でも、弁護士をたてて過払い金返還請求をすれば、ほぼほぼ満額に近い形での返還が受けられているようですが、過払い金に利息を付けて返還請求をするとさすがに難しいようです。ある程度のところで妥協は必要になりますが、概ね裁判外で解決できるでしょう。
エポスカード
【特徴】
2006年から発行されているカードで、大手丸井(マルイ)グループの子会社、株式会社エポスカードが運営をしているVISAクレジットカードです。
【ポイント】
エポスカードは、取引履歴の開示など手続き自体には比較的丁寧に応じているようですが、裁判外で満額を回収する事は簡単ではないようです。8割程度の妥協案をだしてくることもあるようですが、訴訟を提訴するくらいであれば、その程度で合意するのも一つの選択肢と言えるでしょう。
モビット
【特徴】
最近派手なCMや広告などで知名度がかなり上がってきたモビットですが、結論から言うと過払い金が発生している可能性は極めて低い、というか発生しないはずです。なぜなら、モビットはもともと貸付金利が利息制限法の18%以下だったため、過払い金は原則発生しません。
過払い金返還の可否一覧表
過払い金返還が見込める金融機関 | 過払い金返還が現時点で見込めない金融機関 |
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過払い金返還の難易度が高めの金融機関 | |
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まとめ:過払い金はお早めに弁護士にご相談を
このように、消費者金融によって過払い金の返還状況や返還される金額の目安、そして必要となる期間はかなり変わってきます。
また、状況の変化も激しいため、現在は過払い金の返還に応じていても、経営状態が悪化して引当金が準備できなくなると、裁判外での解決が難しくなる場合もあります。そのため、これらの消費者金融から借入をしている人は、まずは一度、弁護士まで相談し、過払い金が発生していないか調べてもらいましょう。
なお、過払い金返還請求は司法書士でも対応できる場合がありますが、回り道をして結局弁護士に依頼するというケースもあります。ですので、過払い金返還請求は迷わず弁護士に相談すべきです。
(参考記事:過払い金返還請求は、弁護士と司法書士どっちに依頼すべき?)
過払い金は金融機関から一方的に返還してくることはありません。こちらから申告しなければ返ってこないということを覚えておく必要があります。
また、過払い金は期限(時効)があります。過払い金の期限は10年です。
最終取引日から10年ですので、2006年に最高裁でグレーゾーン金利を認めない判決が出てから2016年で10年となります。ですから多くの方が2016年前後にこの過払い金を受け取れる期間が時効となり、多額の過払い金が返ってこなくなる可能性があるのです。
(詳細:過払い金返還請求の期限「最後の取引から10年間」で時効?
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