金融庁は、平成29年9月20日に3メガバンク(三菱東京UFJ・三井住友・みずほ)に対する立ち入り検査を実施しました。
銀行におけるカードローンの平成29年6月末の残高は、前年同月比8.6%増の5兆6793億円となっており、この金額は、5年前の1.7倍に膨らんでいることを踏まえたものであると考えられます。
つまり、「即日融資」や「収入証明書不要」といった甘い言葉を匂わせ、貸付を行っている実態があるのではないか、という疑いを金融庁が抱いている故に、今回の立ち入り検査が行われました。
今回の立ち入り検査は、上記したように3メガバンクのみが対象となりましたが、今後地方銀行などにも立ち入り検査を行う意向を金融庁は有しているようですので、今回どういった事情で立ち入り検査が行われたのか、また、貸金業法はどのような規制を行っているのかを勉強しておくことは、特に債務を負ってしまっている方にとっては有益なのではないでしょうか。
この記事では、今回の立ち入り検査の背景にあることは確実な「貸金業法の規制」について触れた上で、債務整理をどのようにすべきかについて解説したいと思います。
1.総量規制とは
1−1.貸金業法での規定
貸金業法は、貸金業者に対して、借主(債務者)の返済能力を調査することを義務付け(貸金業法13条1項)、その上で貸金業法13条の2第2項が、債務(簡単に言えば借金)の残高が当該借主の年収の3分の1以上となるような貸付については禁止しています。これがいわゆる総量規制、というものです。
総量規制を定めている趣旨は、端的に言えば多重債務者をそもそも生み出さないためです。
総量規制があれば、貸金業法2条2項・1項が定める「貸金業者」、分かりやすい例で言えば消費者金融からの貸付に限度額が存在することになります。つまり、消費者金融は年収の3分の1を超える借金を既に有してしまっている人に対して、その金額以上の貸付を行うことができない、ということになるのです。
そうすることで、多重債務者を減らす効果を望むことができます。
1−2.銀行における総量規制
しかし、後述するように、銀行は貸金業法上の貸金業者には該当しません。そのため、銀行による貸し付けには総量規制がかからない、ということになります。
総量規制が働かない、ということになれば、債務者が銀行ローンの支払いに追われる事態が発生する可能性が出てくることになり、結果として、自転車操業→多重債務者といった流れに乗ってしまう危険性が高くなります。
なぜ、そのようなことになっているのか、というと、銀行については「銀行法」という法律が様々な規制等を行っているからです。そのため、貸金業法は適用されません。
その結果どうなるかといえば、上記した総量規制の適用を銀行が受けない、といった法律の落とし穴が発生することになるのです。
これを自由に許してしまっていては、せっかく貸金業法で総量規制をかけ、多重債務者を発生させないようにしようとしても、貸金業者+銀行で借金を増やす人が増えてしまい、意味がなくなってしまいます。
本来であれば、銀行による貸し付けはそれ相応の与信、つまりは信頼がなければ課すことはできない、という前提があったのですが、近年、銀行が運営するカードローン会社が、電車広告やCMでも宣伝しているように、貸金業者とあまり変わらないハードルでお金を貸すという事態が発生しているため、今回そういった実態の是正を目的として、3メガバンクに対し金融庁が立ち入り調査を行ったのです。
2.多重債務者の救済
さて、今回のようなニュースに代表されるように、国としても多重債務者を発生させないような努力をしているところではあります。
もっとも、これはあくまで事前に(債務者が多重債務者とならないように)規制をかけて、多重債務者の発生を防ごう、という試みです。残念ながら、既に多額の債務を多方面で負ってしまっている多重債務者の方にはあまり効果を生じさせるものでありません。
そのような方においては、債務整理を早急に行い、ご自身の生活を見つめなおすのが、生活を立て直すための最善の選択肢といえます。
2−1.過払い金の有無
まず、検討すべきなのは過払い金の有無の確認でしょう。
テレビCMで大手法律事務所や司法書士事務所が盛んに宣伝しているように、一定期間より前に借金をされているような方の場合には、過払い金が発生していたり、場合によっては返金を受けられる場合があります。
平成22年(2010年)より前、つまりは金利についての貸金業法や出資法が成立する前には、利息制限法が定める金利の上限(例えば、10万円以上100万円未満であれば年18%)は超えるものの出資法で定める金利の上限(年29.2%)は超えない(違反しない)金利で貸し付けを行う業者が数多くありました。そのため、2010年以前に借金をしている方の場合については過払いが発生している可能性があり、返還請求をすることでお金が返ってくる可能性があります。
この返ってくるお金のことを「過払い金」と呼ぶことになります。
(1)過払い金を認めた判例
従前、このいわゆる「グレーゾーン金利」については、債務者が自由な意思に基づいて行う、いわゆるみなし弁済として有効、とされてきましたが、最高裁判所平成18年1月13日判決が、貸金業法について、
「法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」とは、債務者が利息の契約に基づく利息の支払に充当されることを認識した上、自己の自由な意思によってこれを支払ったことをいい、債務者において、その支払った金銭の額が利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しないと解される(最高裁昭和62年(オ)第1531号平成2年1月22日第二小法廷判決・民集44巻1号332頁参照)けれども、債務者が、事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には、制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはできず、法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである」
と判示し、従前の取り扱いを無効と判断しました。そのため、その差額について「過払い金」として返還請求できる可能性が発生したのです。
2−2.債務整理
(1)任意整理
仮に、過払い金が発生しない場合についても、任意整理について検討することができます。
任意整理とは、債権を有している会社(個人の場合もありますが)に対し、債務の圧縮や分割による返済方法の相談を行うことです。
あくまで「任意」ですので、債権者がこれらの相談に応じてくれる必要があります。単に債務(借金)を減らしてください、というだけでは中々交渉は難しいと思いますが、その先にあるのは次の手段である自己破産です。(民事再生という裁判所を使った再生の手続もありますが、個人の方の場合、個人再生と呼ばれる手続きです。)
任意整理においては、「この相談に乗ってくれなければ、債務者は破産するしかない。」「そうなれば、債権者は1円たりとも手にすることができない可能性が高くなる。」というのが、(特別な人的関係がある場合を除けば)唯一の交渉手段、ということになるでしょう。
それに応じてもらうことで債務を圧縮、あるいは弁済方法を軽くすることができれば、債務者の生活の立ち直りに資する結果となります。この点については、弁護士との綿密な打ち合わせが必要でしょう。
(2)自己破産
上記したように、任意整理がうまくいかない、あるいは応じてもらえたものの、やはり生活を立て直すことができない、ということであれば、自己破産することを検討しなければなりません。自己破産と言っても、実際のところそれほど大きなペナルティーもなく、健全な生活を取り戻すことができる手段と評価できます。
実際に、地方裁判所では、毎日かなりの数の「債権者集会」というものが開かれており、かなりの数の人(会社)が自己破産していることが分かります。自己破産に際しては、多くの場合弁護士に依頼し、書類の作成を行います。
この際、ご自身の抱えている債務がどの程度なのか、実際のお金の動きはどうなのかが聞かれますので、金銭消費貸借契約書はもちろん、通帳等お金の動きが分かるものについても法律事務所に持参するようにしてください(裁判所にもコピーを提出することになります。)。
(3)自己破産の種類:同時廃止と管財事件
法人ではなく、個人の場合、ここから先は2パターンに分かれます。
債権債務関係や実際の金銭の使途に大きな問題がないような場合であれば「同時廃止」といって、裁判所に申し立て、破産決定が出されると同時に債権者に対する債務の支払いが実質的に免除される決定(免責決定)が出ることになります。
破産決定と同時に免責決定を出してもらえない場合には、破産管財人がつくことになります(管財事件)。通常は弁護士がこれに就任し、申立人からの資料などを精査して、申立人の債務を免除するのが妥当かどうかを判断することになります。
最終的には債権者集会を裁判所で開き(債権者が出席すれば債権者の意見を聞き、)裁判所に対して破産管財人が意見を伝え、問題なければ免責決定、という手続きになります。
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