前回の記事(参考記事:『自己破産』に関する専門用語が多すぎる!簡単に教えて!)で、自己破産にはその手続きにいくつかのパターンがあるとお話しましたが、今回は具体的にどのようなケースでどのような手続きが選択されるのかについて解説していきたいと思います。
■自己破産の原則は「管財事件」。例外が「同時廃止」
例えばあなたが知り合いXに100万円を貸している状態で、そのXが自己破産を申立てたとします。あなたとしては、少しでもそのXに財産が残っているのであれば、可能な限りその財産から弁済を受けたいと思いますよね。ですから、自己破産の原則は裁判所が破産管財人(破産したい人の財産を売却して債権者に公平に分配する人)を選任して、Xが持っている家や車を売却して、可能な限り債権者に返済するよう配慮する形でなければ本来筋が通りません。
けれども、現実的にXにめぼしい財産がないことが明らかな場合、わざわざ破産管財人を選任して財産調査をするだけ無駄です。そもそも少額管財だとしても20万円の予納金を用意しなければならないため、これすら準備が難しい場合は少額管財に入れません。
そのため、「破産手続開始申立」と同時に「免責許可申立」を行い、破産手続きを「廃止」してしまいます。よってこれを「同時廃止」と呼んでいるのです。
実務上は、同時廃止の方が費用も安く抑えられる上、手続きが非常に簡略化されるため、申立てから2〜3ヶ月程度で免責許可決定となります。そのため、個人の自己破産を得意としている弁護士は、できる限り同時廃止の手続きにもっていこうと試行錯誤するそうです。
ただし、不動産を所有している場合や自営業者の場合は、状況によっては高い財産価値が見込める場合もあるため、同時廃止ではなく少額管財となる場合もあります。
■同時廃止と異時廃止って何が違うの?簡単に教えて。
同時廃止は最初から申立人にめぼしい財産がない事が明らかなため、簡単に言うと「破産手続きをやるだけムダ」という考え方で、申立てと同時に破産手続きを廃止し終了させ、ムダとなる破産管財人の人件費などを発生させません。そのため、「債権者集会」も行ないません。なぜなら配当がないため、説明する事もないのです。
これに対し異時廃止とは、「財産があると思って調査したけれど、やっぱりなかったことが分かった」場合に破産手続きを廃止することです。
具体例で言うと、現預金残高などはほとんどないものの、価値のありそうな不動産を所有していたり、個人事業を営んでいたりすると一旦は破産管財人が選任され調査が入る可能性があります。
○異時廃止の具体例
まだ記憶に新しいですが、2014年にマウントゴックスが実に114億円の資金を消失し経営破綻しましたが、これにより同社の「ビットコイン」を利用していた人が多額の損失を出し、自己破産に追い込まれたケースがあります。
ビットコインを利用していた人の中には海外の銀行に口座を開設していたり、場合によっては海外法人を設立したりしているようなケースもあり、財産価値が容易に把握できないため、一旦は管財事件となったものの、調査の結果めぼしい財産がなく、債権者集会を開いて「異時廃止」となったケースがありました。
このように異時廃止の場合も財産がなかったわけですから、債権者への配当もありませんが、一応は破産管財人が選任されますので、「債権者集会」は開かれる事になります。
債権者側からしてみれば、同時廃止も異時廃止もどちらも配当はないわけですから、結果だけ見ると同じです。
ただ、異時廃止となる場合でも、債権者側からすると債権者集会当日までは配当があるように錯覚する可能性があるため、債権者集会において債権者から「ふざけるな」と怒号が飛ぶ可能性はあるでしょう。
■自己破産における弁護士の役割とは。
少額管財でも同時廃止でも、自己破産の申立ての前にある程度の債務調査や財産調査は必要になります。これらの手続きを一切せずに申立てをすると、破産管財人に大きな負担がかかるため、その分多額の予納金が必要になってしまいます。
そこで、自己破産を申立てる前に債務者の代理人である弁護士が、債務者に心当たりのある債権者を洗い出し、債権調査票を郵送するなどして債務調査を行うことで、破産を申立てた段階で「同時廃止」「少額管財」「特定管財」なのか、どの手続きをとるべきかが分かるのです。
ですから、自己破産など債務整理を検討するのであれば、自分に適した自己破産の手続きを踏むことができるよう、事前に債務整理に強い弁護士との密な相談をし、計画を練る必要があります。借金返済問題等でお困りの埼玉県越谷市付近の春日部、川口、吉川、三郷、八潮、草加、東京都足立区、などのエリアの方はお気軽にまずはご相談ください。
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