相談者 Aさん 20代 会社員 父母と同居
Aさんは多額の借金を背負い、自己破産をすることになりましたが、ローンの支払いが残っている自動車を所有し、このローンにはAさんの父親が保証人になっていました。Aさんにとってこの自動車は、通勤のためにどうしても必要なものでした。Aさんは、破産は覚悟しておりましたが、何とかこの自動車を確保できないかと相談に来られました。
自己破産の場合でも自動車を確保する方法はいくつかありますが、Aさんのケースでは保証人にローン残額を支払ってもらう方法をお勧めしました。その結果Aさんの父親が、保証人として車のローン会社に全額支払ったうえで車のローン会社に代位して父親を所有者として名義変更して登録し、自動車自体はAさんが無償で利用することを父親に認めてもらいましたので、実質的にAさんは車を継続して利用することが出来ました。
自動車をローンで購入した場合、ローン会社が所有者として登録されていることが多いのですが、その場合、自己破産手続によりローンの支払いが出来なくなると、その自動車はどうなるのでしょうか。
通常はローン会社がその車を引き揚げ、売却し、売却代金をローンの返済に充てられますので、破産者は車を手放さなければなりません。破産状態にあるのですから、しばらくは自動車の利用を諦めなければならないのが普通だと考えます。
しかし、どうしても自動車を使わなければならない事情をお持ちも方もおられるでしょう。そういう方のために、一般的に自動車を確保する方法として、家族や親族にローンの残額を一括で支払って自動車を確保してもらう方法です。Aさんのケースでは、父親が保証人ですので、父親が車のローン会社に残額を支払った場合、保証人である父親は民法第500条に基づき、車のローン会社に代位して、車の所有名義を車のローン会社から保証人に変更することが出来ます。そして、保証人である父親が主債務者である破産者にその自動車を継続して利用することを認めてくれれば、破産者は、実質的には継続してその車を利用することが出来るようになるのです。
したがって、①保証人に車のローンの残額を支払う資力があり、②保証人が継続して車を利用することを認めてくれるという条件を満たせば、破産者でも実質的には車の利用を継続することが出来ます。
ただし、上記の場合でも、車の価値よりも車のローン金額の方が高額である場合には問題になりにくいですが、車の価値の方が高く、車のローン金額が車の価値よりも僅少の場合には、管財事件となって、差額分につき破産管財人が弁済をした保証人に請求し、保証人がそれを支払うことが出来なければ、結局は自動車を手放さなければならない可能性があるということだけは注意が必要です。この件は、大変難しい問題ですので、必ず弁護士のアドバイスを受けてください。