住宅ローンと消費者金融借入金の830万円で破産申立したケースで、火災保険解約返戻金42万円の手元現金があったが、管財事件を回避し、同時廃止により現金42万円を確保した事例
Aさん、40代、男性、会社員、妻と子1人
Aさんは、自宅を2500万円で購入し、毎月7万円、ボーナス月19万円の返済約束で銀行の住宅ローンを組みました。収入は28万円でしたが、その後の会社の業績不振で、ボーナスがカットされると、ボーナス月の返済ができなくなり、消費者金融から借入をして返済をするようになりました。
このような状態が2年続きましたが、結局会社は倒産してしまい、Aさんは転職できたものの、給料が少なかったために消費者金融の支払も住宅ローンの支払いも全くできなくなってしまいました。
Aさんは、住宅を残したい希望が強く、当事務所は民事再生を検討しましたが、現状の給料では年間120万円の住宅ローンの返済自体が困難であることから、今の住宅が全てではないので、自己破産で一からやり直すことお勧めしました。
Aさんは、銀行と相談の上自宅を1700万円で売却し、ローンが650万円残りましたので、この650万円と消費者金融の180万円の合計830万円で自己破産の申立をしました。自宅売却の際火災保険を解約し、解約返戻金が42万円戻りました。
当事務所は、裁判所に同時廃止の上申を行った結果、財産として42万円がありましたが、管財事件にすることなく、同時廃止で手続きが終了し、Aさんは、42万円を引越に関連した当面の生活費等に使うことができました。
住宅ローンを滞納した場合の対処方法としては、民事再生の方法により不動産を維持する方法がありますが、この場合、住宅ローン自体は支払えることが前提です。Aさんは、収入の悪化で、ローン自体を支払えなくなったので、民事再生は使えず、住宅を手放さざるを得ません。その方法として、競売手続きに任せるという方法がありますが、引越の時期を事由に決められない、競売価格が低いという欠点があります。
お勧めは、任意売却による方法で、この方法ですと、引越の時期も柔軟に決められ、場合によっては、引っ越し費用も工面してもらえ、売却価格も競売よりも高いという利点があります。Aさんは、任意売却の方法をとり、引越もスムースに進みました。火災保険の解約返戻金42万円が手元に残ったのですが、本来、破産者に20万円を超える現金がある場合には、管財事件になり、管財予納金(引継ぎ予納金)として20万円を破産管財人に納める必要があります。
当事務所は、Aさんの生活苦を憂慮し、42万円全額をAさんの自由にできるよう、裁判所に対して同時廃止の上申をしました。このような場合、裁判所が必ずしも同時廃止を認めてくれるわけではありませんが、当事務所では、ご相談者の窮状を救うため、極力同時廃止を認めてもらえるよう裁判所に働きかけています。