債務整理の中でも住宅を残せる個人再生は、マイホームなどの財産がある人にはメリットの多い制度です。
申立が認められれば、その後は減額された残債を再生計画に従って返済します。しかし、その途中で完済が難しくなった場合、どうすればいいのでしょうか?
ここでは、個人再生後に完済できなくなった場合、どのような手段を取れるのかを解説します。
目次
1.個人再生について
個人再生は債務整理の一種で、マイホームを手放すことなく借金を減額できる制度です。
債務整理には、他にも任意整理と自己破産がありますが、任意整理は借金の減額幅が少なく、自己破産は自宅を没収されるのが大きな難点です。
個人再生はこの2つの中間にあり、それぞれのデメリットを補完する制度です。財産があり、比較的借金の大きい人に適しています。
個人再生の申立が認められれば、その後は原則3年で減額後の残債務を再生計画に沿って返済します。
個人再生の認可には「継続的な安定収入があること」が条件となるので、無収入で認可後の返済ができないと思われる人は認められません。
また、再生計画に無理がある場合も認められないので、個人再生が認可されるのは残債務を返済可能であると判断される場合のみです。
しかし、中には途中で病気やリストラ、事故など様々なアクシデントにより、再生計画の履行ができなくなることもあります。
そんなときはどうしたら良いのでしょうか?
2.再生計画の途中で返済ができなくなったときは?
個人再生の途中で残りの借金が返せなくなったときに、そのまま放置するとどうなるのでしょうか?
2−1.放置すると再生計画は取り消し
再生計画の途中で、返済ができずにそのまま放置していると、一定の条件のもとに再生計画自体が取り消しになります。そうすると、減額された借金は元通りになり、一層苦しい状況に置かれます。
そうなる前に、返済ができないと思ったら、以下の2つの措置のいずれかをとりましょう。
①再生計画の変更・延長
当初の予定が狂い、再生計画が履行できなくなったときは、再生計画の変更・延長をすることができます。
ただし計画変更・延長が認められるのは「やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難になったとき」(民事再生法234条)のみです。
やむを得ないと認められるのは、病気やリストラなど、事前の予想ができず、かつ本人がコントロールできない事情です。
計画変更は最長で2年間の延長が認められています。変更できるのは期間のみで、返済額を減らすことはできません。また、住宅ローンについては変わらず支払う必要があります。
②ハードシップ免責
個人再生後の返済を殆ど終えていて、あともう少しで完済というタイミングで支払いができなくなったときは、ハードシップ免責制度を利用することもできます。
これは個人再生で完済できない人を救済するために作られた制度ですが、内容は以下で解説します。
3.ハードシップ免責について
ハードシップ免責はやむを得ない事情で、再生計画の遂行が不可能になったとき、一定の厳格な要件を満たす場合に残りの借金を免責する制度です。
3−1. ハードシップ免責の利用条件
ハードシップ免責が認められるのは以下の5つの条件を満たす場合です。
①減額された弁済額のうち3/4以上を既に返済している
ハードシップ免責は減額された弁済額の3/4以上返済していることが条件です。
ハードシップ免責は債務者を救う一方で、債権者に損害を与える制度でもあるので、個人再生後再生計画で定められた返済開始後、間もない段階では認めることはできません。
ハードシップ免責は、長年真面目に計画通り返済してきた債務者を救済する制度です。借金の大半を返し終わった段階で、不慮のアクシデントに見舞われる可能性は0ではありません。
そうしたときの救済のラインとして「弁済額の3/4以上の返済済み」という基準が設けられています。
②再生計画の変更が極めて困難
個人再生で返済ができなくなったら、第一には再生計画の変更で対処します。その都度免責をしていたら、債権者に不利益が大きくなるので、返済期間を延長することで事態の打開をはかるのです。
例えば、給料が減額されて返済が苦しいときには、再生計画を変更することで対処することができます。
しかし、長期間無収入の状態になると予想されるときは、再生計画を変更、延長しても返済することはできません。
このように、ハードシップ免責は、再生計画の変更が極めて困難である、と判断される場合に限って認められます。
③責めに帰することができない事由で、再生計画の履行が困難な状態になった
責めに帰することができない事由には、以下の例があります。
- 会社倒産でリストラされ、再就職もバイトも決まらず無収入である
- 個人事業をしていたが、地震、火事などの災害で事業継続ができなくなった
- 重病や交通事故による重傷で、長期入院を余儀なくされる
こうしたときには、再生計画の履行も困難と判断され、ハードシップ免責適用の対象となります。ただし、こうした事由があっても、他の要件を満たしていない場合は適用外です。
④免責の決定が再生債権者の一般の利益に反するものでないこと
再生債権者の一般の利益に反するものでない、という表現は分かりにくいですが、これは、仮に個人再生をした段階で自己破産をしていた場合、債権者がそのとき受け取ったであろう配当額よりも、多額の弁済が終わっていることを意味します。
個人再生は債権者の同意の上で、財産手放すことなく経済的な再建を図れる制度です。財産没収をされる自己破産でなく、個人再生を認めるということは、債権者にしてみれば相手にチャンスを与えていることになります。
しかし、そうした善意にも関わらず途中で返せなくなり、結果的に最初に自己破産されるより損をした、ということになれば債権者の不利益は甚大です。
そうしたことを防ぐために、ハードシップ免責の適用に際しては、債権者の一般の利益に反しないことも条件となっています。
⑤上記の条件を全て満たしている
ハードシップ免責の適用を受けるには、以上の条件を全て満たしていなければなりません。一部だけでは却下されるので、その意味で非常にハードルが高い制度と言われています。
3−2. 住宅ローンはどうなる?
ハードシップ免責を受けると、住宅ローンも免責の対象となります。しかし、住宅ローンも免除されて晴れて借金がなくなる、という話ではありません。
住宅ローンが免除された段階で、ローン会社は抵当権を行使できるので、抵当権を実行された段階で住宅は没収され、競売にかけられてしまいます。
そのため、住宅ローンが残っている人で自宅を守りたい場合は、ハードシップ免責は慎重に検討する必要があります。
4.ハードシップ免責の要件を満たせないとき
ここまで説明した通り、ハードシップ免責の適用には非常に厳格なルールがあります。実際問題これだけの条件をクリアできる人は少ないのが現状です。
個人再生後に債務者が返済できず、再生計画の変更・延長もできず、ハードシップ免責の要件も満たせない場合は、債権者によって裁判所に再生計画の取り消しを求められるケースが大半です。
4−1.再生計画の取り消し
債権者から再生計画の取り消しの申請をされ、裁判所が認めると、個人再生はなかったことになり、負債は個人再生手続き前の元の額に戻ります。
債務者にしてみれば、減額後の借金の返済に行き詰っているのに、負債が減額前の額に戻ったら、返済はもはや不可能です。
そうなると、大抵の債務者は支払いができないので、債務整理のやり直しをします。
しかし、再び個人再生手続きを行うことは現実的ではありません。また、任意整理をしても債権者が応じることもないでしょう。
そうなると、残る選択肢は自己破産のみです。
4−2.自己破産手続き
ハードシップ免責が認められない場合は、多くの債務者が自己破産をしています。自己破産をすれば借金は全て免責されますが、自己破産は住宅ローンの有無に関わらず、自宅は没収されてしまいます。
ハードシップ免責も住宅ローンが残っている場合には、住宅は手放さなくてはならないので、その点は自己破産と同じです。
しかし、住宅ローンを完済している場合は、ハードシップ免責では自宅を没収されることはありません。この点は大きな違いです。
また自己破産の場合は、自宅の他、一部の現金を除いて、車、預貯金は全て没収されます。ハードシップ免責ではそうしたこともないので、自己破産の方がデメリットは大きくなります。
しかし、個人再生後にどうしても返済できない場合は、自己破産が現実的な選択肢となります。
○個人再生・自己破産の手続きはエクレシア法律事務所へ
個人再生手続きをして借金を返済していたが、どうしても完済できなくなってしまったという方は、弁護士に相談してみてください。
止むを得ない事情の場合、ハードシップ免責により債務が免除される可能性がありますし、そうでない場合の自己破産への移行もサポートいたします。一人で悩まずに弁護士に相談しましょう。
借金問題の解決に強い弁護士が在籍しているエクレシア法律事務所は、埼玉県東部地方(越谷市、春日部市、川口市、吉川市、草加市、八潮市、三郷市周辺)だけでなく、東京都足立区、千葉県柏市、流山市、松戸市周辺などの近隣の方々から、多くのご相談・ご依頼を承っております。債務整理を検討している方々一人ひとりにとって最も適切な債務整理方法をご提案します。
借金は早めの解決が重要です。生活が苦しくなってしまったら、お早めに弁護士にご相談ください。
ご予約は、お電話もしくはメールフォームより承っております。
◆越谷市内の方へ (新越谷/南越谷駅周辺の地図など) |
◆春日部・草加・川口など周辺エリアの方へ (越谷市外からのアクセス) |