借金をするときに連帯保証人を付けた場合、借りた人が約定どおりに返済しないと連帯保証人に債権者から請求が行くことになります。借りた人が自己破産の申し立てをした場合にも同じように連帯保証人に請求が行きますが、個人再生の申し立てをした場合にはどうなのでしょうか?
今回は、債務者が個人再生をした場合に債権者から連帯保証人へどのような請求が行くのかを解説します。
目次
1.個人再生
債務整理の方法の一つに個人再生があります。
個人再生は破産と同様に裁判所を利用して行われる手続ですが、破産と異なるのは、返済を継続していく形で債務を整理して行くところです。
ただ、返済する金額は元の債務額の5分の1程度(最低額は100万円)に減額することができるため、債務者としては手続前よりも負担を少なく返済をすることができるところに大きなメリットがあります。
他方、債権者の立場からすると、債務者が破産をすれば債権の回収はほとんど期待できないのに対し、個人再生であれば減額はされるとしても一定の割合で債権の回収ができますので、破産よりもメリットのある制度であるということができます。
2.連帯保証
多額の借入れをする場合には、借入れの際に連帯保証人を付けることを債権者から要求されることがあります。
連帯保証とは、保証人が借入れをした本人(主債務者)と連帯して保証債務を負担する場合をいい、返済が滞ったときに連帯保証人は債権者からいきなり全額の請求を受けることもあり得る点で、単なる保証とはその責任が大きく異なります。連帯保証人はいわば主債務者と同じ責任を債権者に対して負うことになるのです。
世間でよく「他人の保証人にだけはなるな。」などといわれますが、それは連帯保証人がこのような重い責任を負うためです。
3.個人再生と連帯保証
3-1.連帯保証人の責任の有無
先ほど説明したとおり、個人再生の申し立てをすると、債務者は一定の割合で債務額の減額を受けることができます。
では、この債務者に連帯保証人が付いていた場合には、連帯保証人の負う責任はどうなるのでしょうか?
主債務者が破産や任意整理の手続を取った場合には、債権者は連帯保証人に請求することになりますが、このことは主債務者が個人再生手続を取った場合も同じです。主債務者が個人再生の申し立てをした場合には、債権者は主債務者に請求する代わりに連帯保証人に対して請求をすることになります。
3-2.連帯保証人の責任の額
では、その場合に連帯保証人が負う責任の額はどうなるのでしょうか?
主債務者が個人再生手続で債務の減額を受けるのと同じ割合で連帯保証人の負うべき責任も減るのか、それとも連帯保証人の責任には影響はないのか、いずれになるのかということです。
結論から言うと、個人再生の申し立てがあっても連帯保証人の責任には影響がありません。債権者は連帯保証人に対して、債務の全額について請求を行うことができます。個人再生手続の結果、主債務者が債務の減額を受けたとしても、連帯保証人の負担する保証債務の額は減らないのです。
債権者としてはこのような場合に備えて連帯保証人を付けているわけですから、当然のことともいえます。
なお、連帯保証人が負う責任の額については、本コラムの「5.個人再生による返済と連帯保証人の返済との関係」にも説明をしますので、そちらも参照して下さい。
3-3.連帯保証人への請求内容
主債務者が個人再生申立をした場合に連帯保証人が請求を受けることはすでに述べたとおりですが、連帯保証人は一般にどのような内容の請求を受けるのでしょうか?
普通の連帯保証契約では、約束どおりの返済をしないなど主債務者に契約違反があった場合には、債権者は連帯保証人に対して債務の全額を一括で支払うよう請求ができるとされています。したがって、主債務者が個人再生の申し立てをして返済をストップした場合には、連帯保証人は債権者から残債務の全額を一括で支払う旨の請求を受けるのが通常です。
このように、連帯保証人がある主債務者が個人再生手続を行うと、連帯保証人に大きな影響を生ずることになります。
4.連帯保証人が返済できない場合
主債務者の個人再生申立により連帯保証人が債権者から一括返済の請求を受けたものの、それを支払えるだけのお金がない場合には連帯保証人としてはどうしたらよいのでしょうか?
このような場合に連帯保証人の取り得る方法としては、分割払いでの返済を認めるよう債権者と交渉する方法があります。
また、分割払いでの返済も難しい場合には、破産申し立てなどの方法も検討することになります。
いわば主債務者に巻き込まれるような形で債務整理をすることになってしまいますが、連帯保証人になることを承諾した以上はやむを得ないことですので、主債務者が返済に窮していることを知ったときには、早急に弁護士に相談して債権者からの請求に備えておくことが必要です。
なお、主債務者と連帯保証人が夫婦や親族など近い関係にあって、主債務者が個人再生の申し立てをすることを連帯保証人があらかじめ知っているような場合には、主債務者と連帯保証人が一緒に弁護士に相談して、同時に債務整理を進めていく方法もあります。主債務者が個人再生申し立てをし、並行して連帯保証人が任意整理をするというように連携して手続を進めて行けば、混乱なく債務整理をしていくことが可能です。
いずれにしても、連帯保証人としては、主債務者に異変が起きた場合には、債権者からの請求がまだであっても弁護士による法律相談を早期に受けておくことが重要です。
5.個人再生による返済と連帯保証人の返済との関係
5-1.連帯保証人が保証債務を分割で返済する場合
連帯保証人が債権者との間で保証債務について分割払いによる返済をするとの合意をした場合、債権者は、連帯保証人からはこの合意による返済を受け、主債務者からは個人再生手続で定めた再生計画による返済を受けることになります。債権者が両者からの返済を受けていき、その合計額が元の残債務額に達した時点で返済は終了することになります。
したがって、このケースでは、連帯保証人は債務額全額の返済はしないで済むことになります。
5-2.連帯保証人が保証債務を一括で返済した場合
連帯保証人が債権者からの請求に応じて一括で返済した場合には、分割での返済の場合と扱いが異なります。
個人再生手続の再生計画の認可決定前に連帯保証人が一括で返済した場合には、①連帯保証人が債権届出を行う、②返済を受けた債権者から連帯保証人に債権者の名義変更手続を行う、のいずれかの方法を取って、連帯保証人は主債務者から再生計画に基づく返済を受けることができます。
連帯保証人の一括返済が再生計画の認可決定後に行われた場合にも、連帯保証人は主債務者から再生計画に基づく返済を受けることができますが、その返済は主債務者の再生期間(ケースによって3年~5年)が終わった後でなければ受けることができません。再生計画で予定されていない債権なので、後回しにされてしまうのです。
5-3.連帯保証人の求償権
連帯保証人は主債務者に代わって弁済をする責任を負う者ですから、債権者に返済をして責任を果たしたときには、自分が債権者に支払った金額を主債務者に求償できるのが原則です。これを連帯保証人の「求償権」といいます。
しかし、主債務者が個人再生手続を取った場合には、この連帯保証人の求償権は認められません。主債務者の債務は個人再生手続で定められた再生計画によって確定していますので、この再生計画の定めを超える債務を主債務者が負うことはないのです。
したがって、一括返済、分割返済のいずれの場合であっても、連帯保証人が債権者に対して支払った金額については、連帯保証人が主債務者に返還を求めることはできないのです。
○債務整理の相談はエクレシア法律事務所で
このように、個人再生の場合にも、連帯保証人には債権者からの請求がいくことをあらためて確認しておきましょう。
そして、債権者からの請求を受けた場合には、連帯保証人が返済を行う時期や方法によって法律的な扱いが変わってきますので、早急に弁護士に相談してその後の対応を決める事が大切です。
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