債務整理には任意整理、破産、個人再生などの方法がありますが、このような債務整理の手続を取ろうとする場合に気になるのが連帯保証人の存在です。
「自分が債務整理をすれば連帯保証人に債権者から請求が行って迷惑が掛かるのではないか。」ということは、債務整理をしようとする人の多くが心配し、気に病むことです。できるだけ他人に迷惑を掛けずに債務を整理したいと考えるのは当然のことでしょう。
ここでは、債務整理のうちでも特に手軽に利用できる任意整理をした場合に連帯保証人に生ずる影響について説明し、なるべく連帯保証人への負担が少ない形で債務整理をするにはどうしたらよいかについて説明することにします。
目次
1.任意整理とは
任意整理とは、破産や個人再生など裁判所を利用する債務整理の方法に対して、裁判所を利用せずに債権者と交渉をして、債務の減額や分割払いなどにより返済条件の変更を行うものです。通常は、弁護士や司法書士に債権者との交渉を依頼して行います。
委任を受けた弁護士等は債権者に受任通知を発送して交渉を開始し、依頼者の収入などに照らして可能な範囲での返済額に収まるよう各債権者の返済額や返済回数について交渉して、各債権者と合意が成立するよう目指します。
この任意整理は、破産や個人再生と比較すると、費用が安く済むことが多く、一部の債権者についてのみ整理することができ、官報に氏名が掲載されることもないなどのメリットがあります。
2.任意整理でも連帯保証人に請求が行くのか?
この任意整理により主債務者が債務整理を行った場合、連帯保証人に請求が行くのでしょうか?
残念ながら、任意整理に限らず債務整理手続を行うと連帯保証人に請求は行ってしまいます。債権者としては、債務者が返済できなくなったときに備えて連帯保証人を付けているわけですから、債務者が返済できなくなって債務整理を行った場合には当然債務者に代えて連帯保証人に請求をすることになります。
3.他の債務整理との連帯保証人の負担の違いは?
任意整理・破産・個人再生で、連帯保証人の負担にどのような違いがあるかについて挙げてみましょう。
3-1.破産の場合
主債務者が破産した場合には、連帯保証人は主債務者が負っていた債務について代わりに返済する責任を負うことになります。
破産手続が進んで主債務者が免責決定を得て債務の支払義務を免れることになっても、その免責決定の効力は連帯保証人には及ばず、連帯保証人は債務を返済しなければなりません。
なお、連帯保証人は主債務者に対して求償権を持っていますので、債権者に返済した金額を主債務者に求償することができるように思われますが、この求償権は免責の対象になりますので、免責決定によって行使できなくなってしまいます。
結局、破産の場合には連帯保証人は残債務の全額について返済する義務を負うことになります。
3-2.個人再生の場合
主債務者が個人再生の申し立てをした場合、連帯保証人はやはり主債務者が負っていた債務について代わりに返済する責任を負います。
個人再生の場合には、連帯保証人の求償権はその被保証債務について再生計画に定められた額の範囲内では行使できますが、これを超える部分(つまり主債務者が減額を得た部分)は求償することはできません。
連帯保証人が債権者に対して一括返済した場合にはこの求償権に基づいて主債務者から返済を受けることができますが、それは相当減額された額に過ぎませんし、連帯保証人が分割で債権者に返済している場合には求償権を行使することは現実にはあまり期待できません。
したがって、個人再生の場合にも連帯保証人は全額について返済することになる可能性が高いといえます。
3-3.任意整理の場合
主債務者が任意整理を行った場合にも、連帯保証人は主債務者の債務を代わりに返済する責任を負うことになりますが、この場合には連帯保証人の求償権は制限されませんので、連帯保証人は債権者に返済した金額の全額について主債務者に求償することができます。
しかし、任意整理を行わなければならなくなった主債務者がこの求償に応じられるだけの資力を持っていることはあまり期待できないでしょうから、連帯保証人が主債務者から回収することは現実には難しいでしょう。
ただ、任意整理の場合には、連帯保証が付いている債務を除外して債務を整理することも可能です(破産や個人再生では、一部の債権者を除外して手続を行うことはできません)。
主債務者の意向によりますが、連帯保証人への影響を避けるために、任意整理を選択した上で保証付きの債務は整理の対象から外すというやり方を取れば、連帯保証人には何ら影響を及ぼさずに債務整理を行うことも可能です。
3-4.各手続の比較
以上に説明したことからすると、連帯保証人に最も負担のない債務整理手続は任意整理だということになるでしょう。
したがって、債務整理をしなければならない状況になった主債務者が、なるべく連帯保証人にかかる負担を少なくしたいと思う場合には、任意整理によって債務を整理することが可能かどうかを第一に検討すべきです。
ただ、これが可能かどうかはさまざまな事情によって異なりますから、弁護士に相談した上で慎重に判断すべきでしょう。
4.連帯保証人への請求の内容
債権者から連帯保証人に請求が行く場合、どのような内容の請求が行われるのでしょうか?
連帯保証契約では、主債務者に債務不履行があったときには連帯保証人は残額を一括して支払うとの約定が置かれているのが通常です。したがって、債権者からは残額について一括で支払うよう請求がなされることになります。始めからそれまで主債務者が返済していたのと同じ条件で支払うよう請求が来ることはないといってよいでしょう。
5.連帯保証人も返済できない場合
債権者から一括で支払うよう請求が来ても、連帯保証人にそれを支払うだけの資力がなく支払いができない場合にはどうしたらよいのでしょうか?
このような場合には、まずは連帯保証人としては分割での支払いについて債権者と交渉をすることを検討すべきです。その際、交渉の見通しについて弁護士に相談し、できれば交渉を弁護士に委任することをお勧めします。
なお、連帯保証人にまったく収入がないような場合には分割払いも難しいでしょうから、破産など他の手続を取ることも視野に入れましょう。
連帯保証人も何らかの形で債務整理が必要なことが予測される場合には、できれば主債務者とともに弁護士の相談を受け、主債務者の債務整理と並行して連帯保証人の債務整理も進めて行くことがベストです。
連帯保証人としても、いきなり債権者から請求を受けるよりは、事前に十分準備をした上で弁護士に委任しておけば直接の請求を受けることも避けられて安心できるでしょう。
ただ、連帯保証人と主債務者の関係が夫婦や親子などの親族であれば、債務整理をする旨を事前に連帯保証人に説明することは難しくありませんが、他人の場合にはそうではありません。
事前に説明するかどうかは、連帯保証人との関係をよく考え、弁護士にも相談した上で決定するのがよいでしょう。
6.まとめ
誰しもなるべく自分のことで他人に迷惑を掛けたくはないと考えています。事がお金に関することであればなおさらのことでしょう。頼んで連帯保証人になってもらった人に自分の債務整理で迷惑を掛けてしまうことはできれば避けたいものです。
もちろん、他人への迷惑を避けることを優先しすぎて肝心の債務整理がうまく行かないのでは意味がありませんが、債務整理を行う場合には、より迷惑の少ない方法がないかどうかを専門家に相談した上で方針を決めることが重要です。
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