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旅行会社の「てるみくらぶ」が破産の申請をしたことが話題になりました。
同社は、破産の直前まで顧客を集めて営業をしており、新入社員の内定も行われていたところ突然破綻したので、世間に対して大きな影響が発生したのです。
そもそも破産とはどのような制度なのでしょうか?今回は、てるみくらぶの破綻を例に、会社破産の制度について解説します。
1.てるみくらぶの破産問題
2017年3月27日、旅行会社の「株式会社てるみくらぶ」が東京地方裁判所に破産の申立をして、破産手続開始決定を受けました。
てるみくらぶは1999年の設立以来、海外の格安ツアーのパッケージ販売に力を入れてきた会社で、年間の売上高は130億円程度、従業員が150名程度となっていました。
てるみくらぶの破産がこのように大きく取り上げられたのは、同社が今回の破産申立直前まで営業を継続しており、破産が突然だったためです。
破産申立の直前まで旅行ツアーの販売を行って、多くの利用者から料金の支払いを受けていましたし、2017年度の新入社員の募集を行い、内定者も出ていました。しかし、破産によって利用者は旅行に行けなくなり、払い込んだお金も返ってこなくなったのです。内定者ももちろん就職先がなくなり、各方面に多大なる影響を及ぼしました。
2.てるみくらぶの破産事件の経緯
次に、てるみくらぶの会社破産の経緯を見てみます。
同社は、2016年の9月期には193億円の売上高がありましたが、広告費などがかさんでいたとのことで、資金繰りが徐々に悪化していきます。しかし破産申立の直前まで、通常通りの営業を継続しており、2017年3月21日付や23日の新聞において「現金一括入金キャンペーン」などの広告を掲載してツアーを紹介し、現金で一括払いしたら旅行代金が1%安くなるなどと宣伝していたのです。
ところが、経営状態は悪化の一途をたどり、3月23日に支払うはずだった国際航空運送協会(IATA)への航空代金を支払えず、航空券を発券できない状態となりました。
新規の受注が不可能となったことで、3月24日以降は受注を一時停止しましたが、その後も資金調達の目処が立たず、破産の申立に至ったのです。
3.てるみくらぶの破産の結果
てるみくらぶが破産した結果、社会にどのような影響があったのかを見てみましょう。
てるみくらぶのパックツアーでは、まずてるみくらぶが旅行者を募集します。そして利用者から代金の支払いを受けて航空券を手配し、旅行先の現地の送迎や宿泊代などの支払いをするのが通常の流れです。このことにより、利用者は現地を訪れても滞在先でパッケージツアーに含まれたサービスを受けることができていました。
しかし、今回てるみくらぶが破綻して営業を停止したことにより、てるみくらぶは利用者から預かったお金を現地のホテルなどに支払っておらず、帰りの航空券なども手配しなかったのです。
そこで、旅行者は滞在先で必要なサービスを受けることもできず、帰りの航空券もなくて立ち往生する、という事態が発生しました。
また、旅行前にてるみくらぶに料金を支払った人たちも、旅行に行くことができなくなったうえ返金もされなくなったため、大きな問題となりました。
このようにして支払われた旅行代金は、破産申立時に判明しているだけでも約100億円にのぼり、被害を受けた旅行客は約3万6千人にも及びます。
4.そもそも破産とは
てるみくらぶは破産をしましたが、そもそも破産とはどのようなことか、十分に理解していない人も多いのではないでしょうか。
そこで、以下では破産の基本的な意味や仕組みを確認していきましょう。破産は、人の財産や負債を精算するための制度の1つで、個人でも法人でも利用することができます。
自分から破産申立をすることを自己破産、債権者から申立をすることを債権者破産といいます。個人の場合にはほとんどが自分で申し立てるので、「自己破産」として知られています。
破産をすると、一般に破産管財人という人が選任されて、その人が破産者の財産と負債を清算します。具体的には、資産を売却して現金に換えて、債権者に配当をします。これらの精算手続きが終わったら破産手続は廃止されます。
法人が破産した場合、破産手続が終了したら法人は消滅します。
てるみくらぶの破産事件でも破産管財人が選任され、管財人がてるみくらぶの資産を売却して、精算手続きを進めます。
5.免責とは
次に、免責についても理解しておきましょう。
免責とは、借金などの負債の義務を免除してもらうことです。借金が典型的ですが、それに限らず買掛金やその他の未払い金、保証債務や損害賠償金なども広く免責の対象になります。免責するかどうかについては、破産手続が廃止された後に裁判所が判断するので、手続の最終段階で決まります。
破産したからといって必ず免責があるものではありません。
免責は、破産手続後の借金支払い義務を免除するものですが、法人の場合、破産手続の終了によって消滅するのですから、免責を認める必要がありません。そのため、破産をしたときに免責を受けるのは「個人」のみです。
今回のてるみくらぶの件でも、株式会社てるみくらぶ自体が免責を受けることはありません。同社は、精算さえしてしまったら、消滅してしまうのです。
ただ、法人が破産するときには、法人の代表者も一緒に破産申立をすることが多いですが、代表者は個人なので、同時に免責を申し立てて、手続の最終段階で免責をしてもらう必要があります。
このように、破産・免責を利用すると、会社も個人も、所有している財産の範囲で債権者に配当をしてもらい、残った債務については基本的にすべて免除してもらうことができるのです。
ただし、破産免責してもらっても、税金などの一部の債務の支払い義務は残ります。
6.弁済がほとんどないのはなぜ?旅行業協会への積立金とは?
今回のてるみくらぶの会社破産では、てるみくらぶの利用者への返金が行われる見込みが立っていないことも大きな問題です。
先にも紹介しましたが、てるみくらぶにすでにお金を払い込んだ人は、破産申立をした時点で判明しているだけでも3万6千人もいて、その金額は100億円近くにのぼります。
これについて、てるみくらぶ側は「日本旅行業協会」に積み立て済の保証金によってカバーすると言っています。
旅行会社は、破綻した場合にそなえて日本旅行業協会(JATA)に積立をしており、破綻の際には利用者にそこから返金が行われる制度があるためです。
しかし、てるみくらぶの積立金は最大1億2千万円ということですから、弁済率はわずか1%以下です。保証金によって旅行代金の返済を受けることは、あまり期待できないでしょう。
7.破産手続で弁済を受けられる?
てるみくらぶからの弁済は、保証金以外にも受けられる可能性があります。
今後てるみくらぶの破産手続をすすめていく中で、同社の資産を売却し現金に換えて、債権者への配当が行われるためです。
てるみくらぶに旅行代金を払い込んだ人は、返金請求権を持っているため、てるみくらぶの債権者となります。
ただ、破産の債権者には「順位」があります。また、破産手続によらず随時弁済を受けられる財団債権もあります。
破産者に資産があっても、こうした財団債権や先順位の債権者から順番に配当を受けるので、順位が後の債権者は配当が受けられないか、あっても少なくなります。以下で、もう少し具体的に説明します。
債権の中でもっとも優遇されるのは、「財団債権」です(破産法151条)。これは、破産手続によらずいつでも支払いをしてもらえる債権です。たとえば、破産管財人の報酬や破産手続きの申立費用、税金や社会保険料、従業員の給料(破産手続開始前の3カ月分)などがこれに該当します。
そこで、てるみくらぶにこれらの支払い義務があれば、資産を売却したお金はまずはこちらの支払に充てられます。
次に、「優先的破産債権」があります(破産法第98条)。これは、一般の破産債権に優先して弁済を受けることができる債権です。たとえば、共益費用や財団債権に該当しない従業員の給料、一部の税金などがこれに該当します。
次が、「一般の破産債権」です。これは、通常一般の借金や未払い金などの負債であり、てるみくらぶの返金を求める債権者も一般の債権者です。
そこで、てるみくらぶに支払い済みの旅行代金の返金を求めても、まずは財団債権、次に優先的破産債権に支払をして、それでも余りがある分のみが支払いに充てられることになります。従業員の未払い給料や解雇手当等も相当の金額になることが予想されますので、旅行代金の返済を受けられる可能性は極めて低いのではないかと予想されます。
8.会社破産を検討している方は早期に弁護士と相談を
以上のように、会社が破産をすると会社の莫大な負債を帳消しにしてもらうことができます。
てるみくらぶのように、資金繰りが悪化していて破産直前まで営業をしていたような会社でも、破産をしたら基本的に今所有している財産の中から必要な支払いをすると、会社を清算して消滅させることができます。代表者が保証している場合には、会社と一緒に破産をして免責を受け、支払いを免除してもらうことも可能です。
このように大きな効果のある破産ですが、特に会社破産の場合、自分たちだけで手続きを進めるのは極めて困難です。
揃えるべき書類や作成しなければならない書類も膨大になりますし、裁判所や管財人とのやり取りもスムーズにすすめることは難しく、債権者への対応も必須になるからです。
そこで、会社破産を考えているなら、まずは弁護士に相談しましょう。経営状態が悪くなったら、状況を放置すればするほど悪化し、被害が拡大してしまいますので、早期に弁護士に相談に行くことを強くおすすめします。
9.会社破産のご相談はエクレシア法律事務所へ
埼玉県越谷市にあるエクレシア法律事務所は、会社破産のご相談もお受けしております。越谷市をはじめとし、春日部市や吉川市、川口市、草加市、八潮市、三郷市の他、東京都足立区や千葉県流山市、松戸市、柏市など、埼玉県東部を中心とした広いエリアにて対応しております。
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