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過払い金返還請求において債権者が主張する「みなし弁済」とは?

過払い金返還請求において債権者が主張する「みなし弁済」とは?

平成20年頃より以前に消費者金融やクレジットカードのキャッシングを利用されていた方は、業者に対して過払い金請求できる可能性があります。
ただ、過払い金請求をしたとき、以前は業者が必ずといって良いほど主張した反論理由があります。それは「みなし弁済」です。

現在でも、ときおりそういった主張をする業者もいるので、これを機会に,内容を理解しておきましょう。

今回は、利息制限法がかつて定めていた「みなし弁済」という制度について、弁護士が解説します。

 

 

1.みなし弁済とは

 

1-1.過去の利息制限法の規定

みなし弁済とは、債務者が借金を返済するときに、利息制限法の上限を超えた利率で支払をしても有効になるとみなす制度です。かつての利息制限法43条1項に規定されていました。

その後、平成22年6月に改正利息制限法が施行されていますが、現在の利息制限法にはみなし弁済の規定はありません。そこで、今、消費者金融やクレジットカード会社から借金をしても、相手から、みなし弁済の主張をされることはありません。

みなし弁済が問題になるのは、過払い金請求の場面です。

 

1-2.利息制限法による利率の上限

利息制限法は、お金を貸し付ける際の利息と遅延損害金の利率について、上限を設けています。

利息については、以下の通りです。

 

  • 借金額が10万円未満…年率20%まで
  • 借金額が10万円以上100万円未満…年率18%まで
  • 借金額が100万円以上…年率15%まで

 

遅延損害金利率については、利息の1.46倍が上限となるので、以下の通りです。

 

  • 借金額が10万円未満…年率29.2%まで
  • 借金額が10万円以上100万円未満…年率26.28%まで
  • 借金額が100万円以上…年率21.6%まで

 

基本的に、上記を超えた利率での貸付は違法ですから、効力を生じません。

上記の上限利率を超えて借金支払いをしたら、利息を払いすぎた状態になります。そこで、払いすぎた利息を取り戻すことができるのが、過払い金請求です。

しかし、みなし弁済が適用されると、利息制限法の上限を超えた利息の支払いが有効になってしまいます。すると、利息の過払いにはならないので、過払い金が発生しなくなります。

そこで、貸金業者は、債務者から過払い金返還請求を受けると、こぞってみなし弁済を主張していたのです。

 

2.みなし弁済が成立する要件

みなし弁済が成立するためには、どういった要件が必要になるのでしょうか?

法律の条文では、以下のように規定していました。

 

  • 貸金業登録している貸金業者による貸付であること
  • 貸付の際、貸金業法17条に定める書面(17条書面)を債務者に交付したこと
  • 借金の返済を受けたときに、債権者が債務者に対し、貸金業規制法18条に定める書面(18条書面)を債務者に直ちに交付したこと
  • 債務者が、「利息の支払いであること」を認識しながら、利息を支払ったこと
  • 債務者による利息支払いが任意であったこと

 

基本的に、上記の5つの要件を満たしていると、利息制限法を超過した利率による支払いも有効となり、過払い金返還請求はできなくなるということです。

 

3.17条書面と18条書面

みなし弁済が成立するためには、17条書面と18条書面の交付が必要です。

 

17条書面というのは、貸金業者が債務者にお金を貸し付ける際に、所定の事項を記載して交付する書類です。
18条書面というのは、貸金業者が債務者からお金の返済を受けた後、所定の事項を記載して交付する書類です。
それぞれ、貸金業法の17条と18条に定めがあるので、17条書面や18条書面と呼ばれています。

みなし弁済の有効性に関しては、これらの書面の交付要件が、たびたび問題になりました。

 

たとえば、平成16年2月20日の最高裁判所による判決を見てみましょう。
この事案では、債務者が借金を支払ったあとに業者が債務者に交付すべき、18条書面が問題となりました。
債務者が銀行振込で借金返済をする場合、業者は債務者に振込用紙を送っていたのですが、その振込用紙と一体となった書面に、貸金業法18条所定の事項を書き入れていたのです。

 

「債務者は、その事項を確認しながら振込をするのだから、18条書面を交付したことになるだろう」というのが業者側の主張です。
しかし、裁判所は、これを否定しました。18条書面の交付は厳格に理解すべきであり、事前に送った振込用紙に所定事項を記載していても、有効にはならないと判断したのです。
そこで、この事案では18条書面を交付していなかったことになったので、みなし弁済は成立しませんでした。

このように、裁判所は、17条書面や18条書面について、次々と厳しい判断を下していきました。

 

4.最高裁判決

その後、平成18年1月13日、みなし弁済について、決定的な内容の判決が出ました。

裁判所は、判決において、みなし弁済は、債務者の任意で支払いが行われたことが必要であることを前提に、貸金業者からの借金支払いにおいて、債務者が任意で支払いをすることは事実上認めないという判断を下しました。
それは、債務者が借金返済をするとき、常に「期限の利益を喪失するおそれ」にさらされているからというものです。

 

4-1.期限の利益喪失

貸金業者からお金を借りたら、通常時は分割払いによって返済しています。このように、借金を分割払いできることを「期限の利益」と言います。
しかし、借金の支払いを2ヶ月分程度滞納すると、債権者から残金の一括払いを請求されてしまいます。
このように、借金を滞納したことによって分割払いを認められなくなることを、「期限の利益喪失」と言います。

 

そして、借金している債務者は、利息を含めた借金返済を怠ると、期限の利益を喪失して借金の一括払いが必要になってしまうリスクを常に抱えていると言えます。
このようなプレッシャーの中で借金返済している以上、「まったくの任意で支払をしているとは言えない」というのが最高裁の理屈です。

貸金業者がお金を貸し付けるとき、契約条項に期限の利益喪失条項が入っていないことはあり得ません。そこで、上記の最高裁の理屈によると、貸金業者と債務者との間で、債務者が任意に支払ったと見ることはほとんど不可能となり、みなし弁済が成立する余地がなくなってしまったのです。

 

5.みなし弁済の廃止

以上のように、平成18年1月13日の最高裁判例が、事実上みなし弁済を完全否定したことにより、みなし弁済は無効となり、業者によるみなし弁済の主張が認められることはなくなりました。

また、国としても、裁判所が効果を否定した法律の規定を、そのまま放置しておくことはできません。そこで、法改正の手続きを進めて、利息制限法や貸金業法などの関係法令を、一挙に改正したのです。

 

改正された利息制限法が施行されたのは、平成22年6月18日です。改正後の貸金業法には、もちろんみなし弁済の規定はなく、現在サラ金やカード会社を利用しても、みなし弁済の主張をされることはあり得ません。

また、みなし弁済の規定が廃止されたことにより、業者は利息制限法を超過する利率での貸付ができなくなったので、それ以降は過払い金が発生することもなくなりました。

 

6.過払い金について

ところで、平成22年6月に改正利息制限法が施行されたのなら、過払い金が発生していたのも平成22年6月までなのでしょうか?

実は、そうではありません。法律の改正というのは、急に行われるものではなく、まずは国会で審議が行われ、成立し、その後公布されて、さらにしばらくしてから施行されるという流れになります。その間、数年以上かかることも珍しくありません。

 

利息制限法改正の際にも、平成18年1月13日の判決を受けて、法改正の議論が起こったため、多くの貸金業者は、平成19年頃には、順次利息制限法を超過する利率での貸付を辞めていきました。

そこで、実際には、過払い金は平成19年頃までしか発生しないことが多いです。しかし、業者によっては、平成20年頃まで過払い金が発生します。

 

6-1.過払い金の時効

過払い金の時効は、借金の完済後10年間です。
そこで、特に借金を完済している方は、早めに過払い金請求をする必要があります。

今回説明した通り、たとえ業者からみなし弁済主張をされても、通ることはほぼありませんので、安心して請求手続を進めましょう。

 

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