多額の借金を抱えてしまい、事実上返済が難しくなってしまった場合は、弁護士に依頼して債務整理をしなければなりません。この際に気になることといえば「ブラックリスト」です。
一般的に知られている情報としては、債務整理をするとブラックリストに名前が登録されて、今後さまざまな制約が付きまとう、と言った内容かと思いますが、実際のところ本当にブラックリストなんてものがあるのでしょうか。
もしあるとして、なんとかその情報を消すことはできないのでしょうか。
目次
■ブラックリストの正体とは。
皆さんが「ブラックリスト」と表現しているものの正体は、個人信用情報機関に登録されている金融事故情報のことです。ブラックリストというと、どこか信用のない人の名前がリスト化されているようなイメージを受けますが、実際は個人信用情報機関に加盟しているクレジットカード会社などの金融機関と個人との取引履歴などがすべて蓄積されているようなイメージです。
今回は、その情報の集合体の中の金融事故情報の部分について、「ブラックリスト」と表現して解説していきます。
個人信用情報機関
CIC(株式会社シー・アイ・シー)
クレジットカード会社、信販会社系
JICC(日本信用情報機構)
消費者金融(サラ金) 信販系
全国銀行個人信用情報センター(全銀協)
銀行系
これらが個人信用情報機関です。
個人信用情報機関は、そこに加盟している金融機関から個人の貸付状況などの信用情報を収集しデータベース化して、それを加盟している金融機関が照会できるようにしています。個人信用情報機関はあくまで「客観的」な視点で過去の取引情報を保有しているだけなので、「この人は信用がない」というラベルを貼ってそれを金融機関に公開しているわけではありません。それらの情報を見た上で、金融機関が自己判断で貸付するかどうかを判断しているのです。
■悪い情報だけが登録されているわけではない。
いわゆる延滞などの事故情報だけが載るわけではありません。通常の支払い状況や債務残高などの情報も収集されています。
任意整理(ただし、過払い金で残債務が完済するような場合は登録されないこともあります)、個人再生、自己破産などをした場合は、いわゆる事故扱いになりますので、その内容が個人信用情報機関に登録されてしまいます。
■ブラックリストを恐れるな。情報はやがて消滅する!?
ブラックリストを恐れて債務整理を躊躇している方がいらっしゃるとしたら、それは大きな間違いです。
ブラックリストはこちらからなにもしなくても、一定期間で勝手に消滅するのです。
例えば、クレジットカード系であるCICの規定によれば、金融機関と締結した契約内容や支払い状況に関する情報は、取引終了後5年間が保有期間となります。これを信じるとすれば、5年でブラックリストから消えることになります。逆に言えば、こちらから何かをして働きかけて早くブラックリストから削除する、ということは不可能です。それでは個人信用情報機関の存在意義がなくなってしまいます。また、ブラックリストから消えたからといって必ずローンが組めるわけではありません。再びローンを組んだりクレジットカードを作ったりできるかどうかは、その時のご本人の内容(収入や職業などの属性)も総合して判断されるでしょう。
ブラックリストはその一つの判断要素でしかないのです。
■ローンが組めないことは、マイナスとは限らない。
確かに、すべてを現金でやり取りをするのは、現代社会においては多少の不便を伴うかもしれません。ですが、考えてみてください。ローンを組んで買い物ができないということは、一見するととにかくデメリットと感じるかもしれませんが、そもそもローンを組まなければ再び借金が膨らむこともないのです。債務整理に陥った事態を再び繰り返さないためには、しばらくの間はローンを組まない方が本人にとっても本当はよいはずなのです。ですから、「クレジットカードが作れない」とマイナスに受け取るのではなく、「再び借金を作らないためのカリキュラム」であると前向きに捉えましょう。
■債務整理は早ければ早いほうが、より良い解決が実現します。
借金問題を最もよい形で解決させるには、とにもかくにも「早期相談」が大切です。
通常、借金の返済に行き詰まり始めた直後であれば、ほとんどのケースで任意整理によって、返済計画を見直して立て直すことが可能です。また、住宅ローンがある方でも早い段階で個人再生を実施することで、マイホームを失わずに済むのです。
基本的に借金問題は時間が経てば経つほど、債務は増大し状況は悪化の一途をたどります。あまりにも債務が増えてしまった後では、金融機関側も任意整理に応じなかったり、個人再生が認められなくなったりしてきます。
実際に自己破産に踏み切られた方の中には、「もっと早く相談にこれば任意整理で解決できたのに」という方がたくさんいます。ですから、借金に関するお悩みは、出来る限り早期に相談しましょう。
■自己破産に対する誤解を解消しましょう。
自己破産というとマイナスのイメージがあまりにも強いのですが、実際は他の債務整理と比べてもそんなに大きなデメリットが突出しているわけではありません。
自己破産については間違った情報が多いので、注意が必要です。
よく聞く間違った情報
「自己破産をすると、給料の一部が裁判所に差し押さえられる?」
ご安心ください。平成17年改正の新破産法では強制執行は禁止となり、給与の差し押さえはできません。破産手続開始決定後に取得した財産は自由に管理することができます。
「貯金ができなくなる?」
これも全くの間違いです。むしろ今後しばらくは現金での買い物のみになりますから、出来る限り貯金をして下さい。
「戸籍に自己破産したと記載されて傷がつく?」
そんなこともありません。全くのデマです。もちろん住民票にも書かれません。
なお、自己破産をした場合は「官報」という政府の刊行物に名前が記載されます。官報は政府刊行物を扱う販売所で購入ができるほか、インターネットでも閲覧が可能です。ただ、普通に考えて一般の方は官報なんて見てないですから、自己破産したことが近所に知れ渡るという可能性は極めて低いでしょう。
自己破産に強い弁護士は、「自己破産は国民に与えられた権利」と言う人もいます。日本は一度失敗した人にも、もう一度ゼロからチャンスを与えてくれる国なのです。確かに自己破産をすると、連帯保証人など一定の人に迷惑をかける部分もありますが、自己破産が正当な権利として認められている以上はそれを行使することで早期に解決することが最良の選択なのです。
債務整理は、その人の返済状況、収入などによってベストと言える解決法が異なってきます。ただ一つ言えることは、出来る限り早く弁護士に相談することでより本人にとってメリットの大きな解決がその後可能になるのです。ひとりで頭を抱え込まずに、まずは弁護士に相談しましょう。
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