自己破産を恐れることなかれ。会社破産しても社長になれる。

「社長業をしているが、起業に失敗し会社の借金が膨らみ、経営破綻、会社が倒産しそう。しかし債務整理で自己破産すると、もう代表取締役になれないから、人生やり直したいけれど社長に復帰できないから路頭に迷う・・・。」

自己破産を躊躇されている方の中には、会社の経営権に影響があると思い込んでいるケースがあります。

「自己破産をすると、取締役の欠格事由に該当するから、自分自身自己破産したくても今後また会社を起業したいから自己破産できずにいるんだ」

そんな風に言う方がいらっしゃいますが、実はこれ、一昔前の考え方で、今はそんな制限は存在しないのです！

■新会社法では、破産者でも代表取締役になれます！

たしかに、旧商法では取締役の欠格事由に破産者であることが明記されていましたが、２００５年に施行された新会社法では、その部分が削除されました。つまり、現代表取締役が自己破産しても、会社の経営権を失う事はなく、代表取締役または取締役となる事は可能なのです。

また、これから独立起業を志している人の場合でも、従来までは自己破産をする事で社長の道は閉ざされていましたが、現在では自己破産したとしても依然として社長になる道は開かれているのです。これは自己破産に限らず、任意整理をした場合も同じ事が言えます。

■現役の取締役は、一旦は退任する事に注意。

現役の代表取締役または取締役が自己破産した場合は、一つだけ注意点があります。それは、会社法と民法との関係です。

まず、会社法第３３０条によると株式会社と取締役の関係は「委任契約」であると定めています。ということは、委任契約について規定している「民法」の適用がある事になります。

そして民法第６５３条によると、委任契約の終了事由の中に、

「委任者または受任者が破産手続き開始決定を受けた場合」

との記載があります。つまり、取締役が破産したら、会社との取締役関係は終了してしまうのです。

「え、それじゃダメじゃん」

と思うかもしれませんが、ご安心下さい。あくまで委任契約が終了すると規定されているだけで、「再び委任契約を締結できない」わけではないのです。

つまり、形式上、一度取締役を退任する事にはなりますが、株主総会を開いて再度自分を取締役に選任すれば全く問題ないのです。

■「人生をやり直せる」という最大のメリット

自己破産をした後でも代表取締役になれる、という事は、一度の事業の失敗によってリスタートする資格までは奪われない、つまりは「人生をやり直すチャンスを何度でも与えられている」という事なのです。

世の中には会社の連帯保証人になっている代表取締役の方が大勢います。会社が倒産すると、大抵の場合代表取締役も自己破産をせざるを得なくなります。しかし、今現在の法律では、会社の借金で自己破産をした場合でも、再び会社を起業して代表取締役となれるのです。

たしかに、自己破産をすると、しばらくの間は銀行融資を受けにくくなりますが、それでも再挑戦できるという事には大きな意義があります。金融機関の中には、一度失敗した人の方が、初めて起業する人よりも失敗する可能性が低いと評価している場合もあります。

「たった１回の失敗で人生をあきらめるな」

この法改正は、多くの起業家にそんなメッセージを送っているのではないでしょうか。

■自己破産する場合は、予め弁護士に相談を。

このような法改正が行なわれたため、自己破産をしても再び取締役になる事はできますが、形式上は一度退任する事になるため、他の取締役などの一定の事前理解は必要となります。そのため、自己破産をする際には、予め弁護士に相談しましょう。場合によってはあなたの代理人となって他の取締役や株主に対して説明してもらう必要も出てくるかもしれません。また、何より債務整理を行うという点で、早期に解決を図ることが、傷口を最小限に防ぐ方法です。

ただし、破産手続が終了するまでは、破産管財人や代理人弁護士との打合せ、債権者集会等への出席、その他管財業務への協力が必要となります。特に、債権者集会に対する不安もお持ちになるのではないでしょうか。しかし、弁護士が同席し、適切に対応することができますので、それほど心配する必要はありません。

いずれにしても、早く相談する事にこした事はありません。債務整理で会社破産および自己破産を考えている起業家さんや社長さんは、すぐにでも一度弁護士に相談してみましょう。